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塩風土記

日本全国の塩にまつわる歴史・民俗的な話題をご紹介。

御塩殿祭(みしおどのさい)

伊勢神宮とは大小125の宮社の総称である。各宮では年間で数千回にも及ぶ神事が執り行われているが、その神事に欠かせない神饌(しんせん)のひとつに御塩(みしお)がある。
御塩は、御塩殿神社で年に二回だけ作られる神聖な塩である。その御塩を焼き固めるための火入れ神事が、御塩殿祭だ。

毎年7月末から8月にかけての土用のころ、五十鈴川の河口近くの御塩浜では塩づくりが始まる。御塩浜の塩づくりは入浜式だ。川から海水と淡水の入り混じった汽水を塩田に引き、天日で乾かし、1週間ほどかけてかん水(濃い塩水)がつくられる。
少し下れば海だ。塩分の濃い海水がたやすく手に入るが、あえて汽水を使用するのは、塩の品質のためだという。汽水を使った塩は、海水を使ったものよりもきめ細やかに仕上がるといわれているのだ。神に捧げる神饌として、御塩浜では効率性よりも品質に重きを置いた手間を惜しまぬ塩づくりが行われている。


御塩浜

御塩浜でつくられたかん水は、1kmほど離れた御塩汲入所に貯蔵され、隣り合う御塩焼所で、1昼夜をかけて円形の釜(くど)で炊き上げられ荒塩となる。この炊き上げ方法も昔ながらの薪を使ったもの。大変な苦労だ。

そうやって出来上がった荒塩を年に二回、10月と3月に御塩殿において、三角錐の土器に詰め込み、焼き固め「固塩(かたしお)」が完成する。こうして焼き固められた固塩は「御塩(みしお)」と名を変え、伊勢の各宮で執り行なわれる神事に供されることとなる。


御塩殿

毎年10月5日、御塩殿神社では千年以上前から変わることのない儀式に則り、焼き固めの火を入れる神事、御塩殿祭が執り行なわれている。御火切具と言う火おこしの道具を使い、作業はすべて斎戒沐浴した神宮や奉仕者によって行われる。御塩殿祭の日には、全国各地から塩業に係る人々が集い、より良い塩が多く得られるよう祈るとともに、関係者の安全を祈念している。


御塩焼神事のようす
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