研究報告

平成19年度研究報告

海水総合研究所 研究報告 第9号(2007)

題目 研究者 掲載頁
1 微結晶の付着現象による結晶成長速度向上の検討 正岡 功士、
長谷川 正巳
P1
2 製塩環境中のステンレス鋼の孔食電位に対する塩化物イオン濃度ならびにpH,液温の影響 中村 彰夫、
井上 博之*
*大阪府立大
P6
3 塩化ナトリウム結晶に付着した微量苦汁成分の固結現象への影響 鴨志田 智之 P12
4 煮豆における塩類の影響 眞壁 優美 P15
5 ウメ漬けにおける塩種の違いが脱水、浸透作用に及ぼす影響 中山 由佳、
党 弘之(研究調査部)、
眞壁 優美
P21
6 食品に残留する農薬等のポジティブリスト制度について 野田 寧 P25
7 ジルコニウム担持陽イオン交換樹脂濃縮/イオンクロマトグラフ法による塩化ナトリウム試薬中の硫酸イオンの分析 新野 靖 P32
8 韓国における市販塩の品質調査 澤田 麻衣子、
谷井 潤郎
P36
9 食品中に残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度への対応-分析法の開発状況とセンター販売商品における農薬等の検査結果(No.2-1、No.2-2)- 野田 寧 P41
10 塩製造技術高度化研究開発事業2006年度報告 吉川 直人 P48

研究報告要旨

No.1
題目 微結晶の付着現象による結晶成長速度向上の検討
筆者 正岡 功士、長谷川 正巳
掲載頁 P1
投稿先 日本海水学会誌 61(1)、p29(2007)
要旨
結晶成長速度を向上させるための基礎的検討として、流動層型晶析装置を用いた結晶成長実験を行い、母液中の懸濁微結晶数が塩化ナトリウム結晶の結晶成長速度におよぼす影響について検討した。実験において、成長による種晶の重量増加は結晶成長時間に比例した。その結晶重量の増加速度と過飽和度との比は母液中の懸濁微結晶数と直線で近似できた。このことから、重量基準の結晶成長速度は(dw/dt)av=(A+BNfine⊿Cで表すことができた。次に結晶成長速度の向上が結晶中の液泡量に与える影響を検討した。各実験で得られた結晶の873Kおよび413Kにて乾燥させた場合の重量減少をそれぞれ測定し、両者の差を液泡の水分と見なした。その結果、液泡量への結晶成長速度向上の影響は小さいと考えられた。
No.2
題目 製塩環境中のステンレス鋼の孔食電位に対する塩化物イオン濃度ならびにpH,液温の影響
筆者 中村 彰夫、井上 博之 *   * :大阪府立大
掲載頁 P6
投稿先 日本海水学会誌 61(3)、p169(2007)
要旨
SUS316鋼の孔食電位を、製塩の典型的かん水、濃縮かん水および母液を模擬した溶液中で測定した。種々の条件下で測定された孔食電位を比較することにより、このステンレス鋼の孔食に対する感受性に溶液の塩化物イオン濃度、pHや温度がどのように影響するか評価した。pH領域が中性近傍の場合、孔食電位は溶液のpHに殆ど依存しない。しかし、高pH域では、環境の組み合わせによって決まるある臨界水準を越えると、孔食電位はpHとともに顕著に貴化した。電位走査法で測定された孔食電位VC100と各環境因子の強度とは、本実験で用いた溶液組成の範囲内では、以下の関係を示した。
    VC100= -0.218log(Cl-) + 535/T +0.0224pH -1.48
Cl-T およびpH は、それぞれ、溶液の塩化物イオンの重量モル濃度、温度(K)およびpHを示す。
No.3
題目 塩化ナトリウム結晶に付着した微量苦汁成分の固結現象への影響
筆者 鴨志田 智之
掲載頁 P12
要旨
当センターの販売商品である「食塩」のように、わずかに苦汁成分が存在する乾燥塩における吸湿固結を検討した。この結果、吸湿環境下ではCaCl2とMgCl2が6水和物相当量になるまで水分が増加し、その過程において微結晶が析出することが明らかになった。また、製造直後のH2O/(CaCl2+MgCl2)が6より小さいほど微結晶の析出量が多く、吸湿固結現象が顕著になることが示唆された。
No.4
題目 煮豆における塩類の影響
筆者 眞壁 優美
掲載頁 P15
投稿先 日本海水学会誌 60(5)、p342(2006)
要旨
大豆の煮豆における塩類濃度およびその組成を変化させたときの塩類の影響について検討するため、煮豆の破断応力および皮付き率を測定した。塩種および塩類濃度により煮汁のpH、破断応力、皮付き率が変化することがわかった。破断応力については、煮汁のpHによる効果に加え、カルシウムの影響が見られ、皮付き率については、煮汁のpHに依存した。煮汁のpHの変化は、大豆タンパク質と塩類との結合によって水素イオンが放出されることにより起こる可能性が示唆された。
No.5
題目 ウメ漬けにおける塩種の違いが脱水、浸透作用におよぼす影響
筆者 中山 由佳、党 弘之(研究調査部)、眞壁 優美
掲載頁 P21
投稿先 日本海水学会誌 60(5)、p348(2006)
要旨
苦汁成分、水分、粒径、結晶形状が異なる4種類の市販食用塩を用いて、塩種の違いがウメ漬けにおける脱水、浸透作用におよぼす影響について検討を行った。28日間のウメ漬け後において、脱水量は加えた塩の全塩分量に応じて増加した。また、Na、Mg、Ca、SO4イオンおよびKは、塩からウメへの浸透あるいはウメから漬け液への移動を生じることにより、ウメと漬け液との間で一定の濃度比に到達すること、リンゴ酸およびクエン酸については、ウメから漬け液への移動が一方的に生じ、一定値になることが示唆された。
No.6
題目 食品に残留する農薬等のポジティブリスト制度について
筆者 野田 寧
掲載頁 P25
投稿先 日本海水学会誌 60(5)、p358(2006)
要旨
2006年5月29日に食品衛生法が改正され食品中に残留する農薬等に係るポジティブリスト制度が施行された。このポジティブリスト制度では全ての食品に対して、全ての農薬、動物用医薬品、飼料添加物について残留基準が設定されている。残留基準は、ポジティブリスト制度以前の残留基準に加え、暫定基準、一律基準が設定されている。本報では、ポジティブリスト制度について解説し、その対応について簡単に示した。また、財団法人塩事業センターで取り扱っている製品である塩も食品であるため、ポジティブリスト制度への対応を概説した。
No.7
題目 ジルコニウム担持陽イオン交換樹脂濃縮/イオンクロマトグラフ法による塩化ナトリウム試薬中の硫酸イオンの分析
筆者 新野 靖
掲載頁 P32
投稿先 日本海水学会誌 61(5)、p272(2007)
要旨
塩化ナトリウム試薬中の微量硫酸イオンを、ジルコニウムを担持した弱陽イオン交換樹脂カートリッジを用いて吸着分離した後、イオンクロマトグラフ法で測定する方法を検討した。硫酸イオンはpH2~4でほぼ100%吸着し、0.05mol/L水酸化ナトリウムを5mL以上通液することにより脱着した。硫酸イオンは塩化ナトリウム20%溶液中でも選択的に吸着された。塩中の硫酸イオンの定量下限は、10%溶液50mL処理で0.02mg/kgであった。本法により、市販の標準試薬、特級試薬、一級試薬および局方の塩化ナトリウム試薬中の硫酸イオンの定量が可能となった。
No.8
題目 韓国における市販塩の品質調査
筆者 澤田 麻衣子、谷井 潤郎
掲載頁 P36
要旨
韓国で収集した食用塩を対象に、主成分、微量成分などの分析を行い、これら食用塩の品質を検討した。
(1)
再製塩については、天日塩と比較して塩化ナトリウム純度が高い製品が多かった。また、ほとんどの製品のせんごう方式は平釜式だと考えられた。
(2)
焼・熔融塩については、収集した全ての製品が乾燥塩であり、pH9以上で塩基性塩化マグネシウムが生成している可能性があること、結晶形が原料塩のままである可能性が高いことから、加熱の温度は塩化ナトリウムの融点以下であると考えられた。
(3)
製塩の品質は日本の食塩と同程度だった。
(4)
工塩については、分析した製品3点中の2点が天日塩と精製塩を混合させて製造したものであり、分析値は天日塩相当であった。このように、異なる塩種を混合させて製造した塩は加工塩以外にもあり、今回分析した47点中には8点あった。
(5)
天日塩の品質には大きくばらつきがあり、オーストラリア塩、メキシコ塩などと比べて塩化ナトリウム純度は低かった。
(6)
CODEX有害5元素を分析した結果、水銀、カドミウム、鉛、銅は検出されなかった。ヒ素については、海藻が添加された製品1点からわずかに検出されたが、CODEX規格値を満足しており、安全性には問題ないと考えられた。
No.9
題目 食品中に残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度への対応 ―分析法の開発状況とセンター販売商品における農薬等の検査結果(No.2-1、No.2-2)―
筆者 野田 寧
掲載頁 P41
要旨
食品衛生法の改正により「食品中に残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度」が施行された。当センターが販売する商品について、製造・流通過程および商品中に農薬等の混入がないことを検証するための、検査項目として農薬等116項目を選定した。選定した農薬等に関して分析方法を構築するとともに、当センターが販売する商品について農薬等の検査を実施した。
No.10
題目 塩製造技術高度化研究開発事業2006年度報告
筆者 吉川 直人
掲載頁 P48
要旨
塩事業センターはイオン交換膜法製造業者の委託を受け、2006年4月に塩製造技術高度化研究開発事業を立ち上げ、採かん工程の高度化に向けた研究開発を開始した。本報告では、本事業の概要について述べるとともに、2006年度に実施した次世代イオン交換膜の研究開発の概要について述べる。