研究内容

研究内容

塩の資源に乏しい我が国では、海水からいかにして効率良く塩をつくり、私たちの生活に必要な量を確保していくかが長年のテーマでした。海水総合研究所は、当センターの研究部門の中核として製塩技術、塩の品質などに関する研究に取り組み、その成果を提供します。

製塩技術に関する研究

効率的な製塩技術の構築を目指し、新たな技術の開発に取り組んでいます。また、製塩技術を核とした資源回収技術の開発に取り組んでいます。

商品技術に関する研究

塩商品の品質を改善、設計する研究および塩の新たな用途を見出すための調査等に取り組んでいます。また、調理や食品加工における塩の作用に関する研究に取り組むとともに、塩の摂取等に関する情報発信活動を企図した情報収集等も行っています。

塩の品質および分析技術に関する研究

食品の安全性が取りざたされている現在、食品である塩についても安全性をより確実なものにする必要があります。そのために、塩の安全性を評価するための分析法を開発し、塩製品だけでなく、製造工程の安全性の検証に取り組んでいます。

塩の品質検査の受託業務

塩試験方法および開発した分析技術を用いて、塩、海水、苦汁の受託分析をしています。出荷検査および受け入れ検査等の品質管理にご利用いただけます。

製塩技術に関する研究

海水ろ過技術

現在、製塩工場で使用される海水は、1時間に3,000トン以上です。この海水は、全てろ過された後、イオン交換膜電気透析装置に供給しますが、濁質が厳密に取り除かれていることが必要です。当研究所では、ろ過装置の高性能化を目的として高速ろ過装置を開発し、現行装置の10倍の処理能力で、濁度が1/3~1/4の清澄な海水が得られるようになりました。

高速ろ過装置(パイロットスケール)

50m3/時間の処理能力を持つろ過装置です。繊維状ろ材を使用し、装置形状を工夫することにより、高性能化を実現していました。

イオン交換膜合成技術

イオン交換膜法製塩の実用化により、それまでの塩田法に比べて生産効率が飛躍的に向上しました。しかし、近年、石炭などの化石燃料の高騰や、海外からの塩の輸入量が増加していることから、より省エネルギーで、濃縮性能の高いイオン交換膜の開発が求められてきました。当研究所では、電子線グラフト重合技術を用いることにより上記性能を有するイオン交換膜の開発に成功し、現在、実用化を目標に研究開発に取り組んでいます。

イオン交換膜透析装置(パイロットスケール)

実用規模に近いイオン交換膜を装着できるため、実用化における課題の抽出や膜性能の評価に活用することができます。

結晶化技術

イオン交換膜電気透析装置で濃縮された塩水は、晶析工程に供給されて結晶化し、塩製品となります。品質が良好で、安全性の高い塩製品を効率的に生産するために、新たな晶析機構を適用した晶析装置および晶析操作の開発に取り組んでいます。

小型晶析装置(ラボスケール)

結晶化における様々な現象を解析することを目標に、基礎実験を行う装置です。

腐食防食技術

製塩工程の塩水は、高温・高塩分であり装置に用いられる金属にとって苛酷な腐食環境といえます。
そこで、環境に応じた適切な金属を選定する技術や、製塩工程における防食法、腐食モニタリング法の開発に取り組んでいます。

電気化学的腐食試験装置

金属サンプルを塩水などの溶液に浸漬させ、電気化学測定により金属の腐食挙動を評価する装置です。

海水資源利用技術

製塩技術の研究によって培った技術を活用し、海水から塩の主成分である塩化ナトリウムだけでなく、マグネシウムやカルシウム、カリウム等の有用資源を効率的に分離・回収する技術について研究しています。本技術は、塩湖かん水からのリチウム回収等、海水とは組成が異なる塩水から効率的に有用資源を回収する場面への応用も期待できます。

苦汁からのマグネシウム回収装置

製塩苦汁にアルカリを添加して反応晶析を行うことにより、苦汁中のマグネシウムを水酸化マグネシウムとして回収する装置です。

商品技術に関する研究

商品設計技術

商品としての塩の品質評価法として、流動性、溶解性、付着性、固結性などの物性指標がありますが、これまでは、商品設計に繋がるような定量的な解析ができていませんでした。そのため、物性評価指標を科学的に解析し、それらに影響する因子の寄与を明らかにすることにより、体系的な商品設計法を構築することに取り組んでいます。

恒温恒湿室

装置内の気象条件に合わせて温度、湿度を自由にコントロールすることができます。気象条件による塩の物性変化の解析に用いています。

加工適性技術

漬物や味噌など、塩の作用を利用した食品は数多くありますが、これら食品における塩の作用については、古くから言い継がれてきたものも多く、科学的に解明されていないことが少なくありません。そのため、調理や食品加工における塩の作用を明らかにし、用途に応じた使いやすい塩を開発することに取り組んでいます。

テクスチャーメータ

食品の破断強度や引っ張り強度などを測定する装置です。本装置で測定したデータを解析することにより、食品の食感を表すことができます。

塩の品質および分析技術に関する研究

分析技術

塩は無機物食品であり、一般食品に使用されている分析法を適用することができません。そこで、塩の性質を考慮し、主成分を始め、微量元素や環境汚染物質、農薬などの分析法を開発しました。これらの分析法は、塩の品質調査に活用され、塩を製造する企業、学会などから高い評価を受けています。また、我が国の国内標準法である「塩試験方法」にも適用されています。

ICP質量分析装置

試料をプラズマ内に導入することによりイオン化し、その質量数から元素を測定する装置です。塩、海水、にがり中の微量元素を高感度で測定できます。

安全性評価技術

これまでに開発した分析法を活用し、塩製品だけでなく、原料、製造工程についての安全性を検証してきました。こうした調査は、国内のみならず、日本の主な輸入元であるメキシコやオーストラリアの天日塩田についても実施しました。さらに、塩の分析技術を基に海水環境の研究にも活用し、学会などで情報発信を行っています。

液体クロマトグラフ質量分析計

液体クロマトグラフィーにより分離された、有機物質等をイオン化し、質量分離して検出する装置です。主に、農薬、有機汚染物質などの測定に使用されています。

塩の品質検査の受託業務

塩、海水などの受託分析

分析、試験技術に関する国際的認定制度「ISO/IEC17025」に基づいて、塩、海水、にがりの受託分析を行っています。塩、海水の放射能検査にも対応しています。

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