研究報告

平成18年度研究報告

海水総合研究所 研究報告 第8号(2006)

題目 研究者 掲載頁
1 現行砂ろ過器の複層化による改善効果について 麻田 拓矢、
渕脇 哲司、
吉川 直人
P1
2 Permeability of Zinc Ions across Ion-Exchange Membrane of Ion-Exchange Electrodialyzer 永谷 剛、
吉川 直人
P6
3 電気透析槽に用いられるイオン交換スペーサーの合成法 永谷 剛、
吉川 直人
P15
4 撹拌槽型連続晶析装置を用いた塩化ナトリウムの結晶成長現象と結晶品質の関係 正岡 功士、
長谷川 正巳、
篠原 富男
P19
5 製塩装置防食への外部電源法適用時における発生塩素挙動の検討 加留部 智彦、
吉川 直人、
中村 彰夫
P25
6 豆腐のゲル強度に及ぼす塩類の影響 眞壁 優美 P31
7 食品中の残留農薬等に関するポジティブリスト制度とセンターの対応 野田 寧 P35
8 韓国塩事情調査 谷井 潤郎、
芳賀 麻衣子、
神取たか子(研究調査部)、
丸山 高志(企画部)
P38

研究報告要旨

No.1
題目 現行砂ろ過器の複層化による改善効果について
筆者 麻田 拓矢、渕脇 哲司、吉川 直人
掲載頁 P1
要旨
複層ろ過が可能なろ材としてシャモットを選定し、シャモットを用いた複層ろ過について工程への適用性を検討した。工程試験の結果、複層化によりろ過器の圧損上昇速度を抑制することができたため、逆洗頻度の大幅な低減が可能であった。また、逆洗によるシャモットの層高の経時変化を検討した結果、2年相当の運転でシャモットが磨耗する可能性が示唆されたが、その場合においても圧損上昇速度を抑制することが可能であった。
No.2
題目 Permeability of Zinc Ions across Ion-Exchange Membrane of Ion-Exchange Electrodialyzer
筆者 永谷 剛、吉川 直人
掲載頁 P6
投稿先 Journal of Membrane Science Vol.275 pp.37-45(2006)
要旨
海水中で様々な溶存形態で存在する重金属イオンのイオン交換膜透過性評価法として、陰イオン交換膜における臭化物イオンや硫酸イオン透過性より得られた、1価及び2価陰イオン透過モデル式を提案した。また、陽、陰イオン交換膜における亜鉛イオン溶存種の透過性を陽、陰イオン交換透過モデル式を用い解析した。結果、陽イオン形をとる亜鉛イオン溶存種の透過速度は塩分濃度の上昇とともに、存在割合の低下に従い減少し、陰イオン形をとる亜鉛イオン溶存種の透過性は塩分濃度の上昇とともに、存在割合の増加に従い増加した。
No.3
題目 電気透析槽に用いられるイオン交換スペーサーの合成法
筆者 永谷 剛、吉川 直人
掲載頁 P15
要旨
イオン交換膜合成法を参考とし、網状高分子ネットを基材として、イオン交換スペーサーを合成した。得られた、陽、陰イオン交換スペーサーのイオン交換容量は0.8~1.0meqg-1-dryであり、市販のイオン交換膜と比較し、遜色のない値を示した。また、電気透析槽にイオン交換スペーサーを充填することによる影響を検討するため、セル抵抗を測定した結果、イオン交換基を導入していないスペーサーを使用した場合と比較し、イオン交換スペーサーを使用した場合、抵抗値が減少した。
No.4
題目 撹拌槽型連続晶析装置を用いた塩化ナトリウムの結晶成長現象と結晶品質の関係
筆者 正岡 功士、長谷川 正巳、篠原 富男
掲載頁 P19
投稿先 日本海水学会誌 60(4)、p296(2006)
要旨
連続式撹拌槽型晶析装置を用い、塩化ナトリウム結晶について結晶成長速度と結晶品質との関係を検討した結果、以下の知見が得られた。
(1)
結晶形状は、操作因子に影響されず、粒径が小さい場合には立方体で、粒径が大きくなるとともに磨耗が観察され、角が取れて球状となった。
(2)
液泡量は操作因子に影響されず、結晶成長速度の増加に伴い減少した。
(3)
カリウムおよび臭化物イオン取込濃度は結晶成長速度の増加に伴い僅かに増加する傾向を示した。
(4)
取込濃度は粒径が大きくなるとともに減少するが、粒径が大きくなり磨耗が生じると取込量は増加した。また、凝集現象が顕著と考えられる条件では(3)の取込量の増加を抑制した。
以上のことから、微結晶の付着現象がカリウムおよび臭化物イオン取込濃度を抑制すると考えられた。
No.5
題目 製塩装置防食への外部電源法適用時における発生塩素挙動の検討
筆者 加留部 智彦、吉川 直人、中村 彰夫
掲載頁 P25
要旨
外部電源法を製塩工程で用いられる装置材料の防食に適用した場合、アノードにおいて塩素が発生し、残留塩素は工程溶液中の臭化物イオンを臭素酸に酸化する。残留塩素および臭素酸は水道法において、それぞれ目標値および基準値が設定されているため、外部電源法の導入には注意が必要である。著者らはこれらの生成機構をモデル化し、工程溶液中の次亜塩素酸および臭素酸濃度を推定する方法を検討した。また、この方法を用いてSUS316製蒸発缶に外部電源法を適用した場合の、蒸発缶缶内液の次亜塩素酸および臭素酸濃度を推定した。本推定方法は、防食する装置の材質、箇所、面積に応じて、工程溶液中の次亜塩素酸、臭素酸濃度を推定することができるため、外部電源法の導入を検討する際に有用である。
No.6
題目 豆腐のゲル強度に及ぼす塩類の影響
筆者 眞壁 優美
掲載頁 P31
投稿先 日本海水学会誌 60(4)、p302(2006)
要旨
塩類濃度およびその組成を変化させたときの食感に及ぼす影響について検討するため、大豆加工製品である豆腐を対象として、豆腐ゲルのゲル強度を測定し検討を行った。マグネシウムイオンやカルシウムイオンのように2価陽イオンを持つ塩のゲル強度への効果は大きかった。1価の陽イオンを持つ塩と2価の陽イオンを持つ塩では、2価の陽イオンを持つ塩の方がゲル強度に対する効果は大きかった。塩化マグネシウムと塩化カルシウムでは、0.05mol/l以上の高濃度領域においてゲル強度に対する効果が異なり、塩化マグネシウムにおいてゲル強度が減少した。また、塩化マグネシウム-塩化ナトリウム混合溶液を用いた場合においては、塩化ナトリウムはゲル強度に対して大きな影響はないが、保水力に関与することが示唆された。
No.7
題目 食品中の残留農薬等に関するポジティブリスト制度とセンターの対応
筆者 野田 寧
掲載頁 P35
要旨
当センターでは、海水総合研究所が主体となって、以下に述べるような手段により、当センター製品およびその製造工程において農薬等が残留しないことを検証する予定である。
(1)
当センター製品およびその製造工程の調査
当センター製品中に農薬等が混入していないことを検証するとともに、海水環境、製造工程調査を実施し、製造工程において農薬等の混入がないことを検証する。
(2)
工程における農薬等の挙動研究
海水のろ過、イオン交換膜法による濃縮、晶析などの分離工程における農薬等の挙動を明らかにし、製造工程において農薬が混入しないことを科学的に検証する。
(3)
周辺環境の実態調査
製造工程における周辺環境を調査することにより、周辺環境の汚染がないこと、また前述の製造工程調査と合わせて周辺環境から生活用塩、および製造工程への農薬等の混入がないことを検証する。
No.8
題目 韓国塩事情調査
筆者 谷井 潤郎、芳賀 麻衣子、神取 たか子(研究調査部)、丸山 高志(企画部)
掲載頁 P38
要旨
韓国では食品公典により国家として食用塩の規格が定めているが、その規格には、いくつか興味深い点があった。有害微量元素がCODEXの食用塩規格から銅を除いたものとなっていること、また、「焼・熔融塩」にのみ、“溶解分”に加え“砂分”という項目があること、主成分では“カルシウムイオン”や“マグネシウムイオン”がないのに“硫酸イオン”だけ定められていることなどである。これらの規格は、国家として必要であるが故に定められたと思われるので、規格制定の経緯が分かれば、食用塩の安全性に対する韓国の考え方の一端が見えてくると考えられる。
韓国以外の諸外国の食用塩の安全性に関する考え方を調査することにより、日本における食用塩の安全性はどのようにするのが適切であるのかを検討する資料となるのではないかと考えられ、今後も調査を行なうことは有益と考える。