| 突然で恐縮ですが、本誌月刊Webマガジン『en』は本号をもって休刊とさせていただきます(こちらでもお知らせしています)。今回は一編集部員として約4年半にわたり本誌に携わってきて感じた率直な気持ちをお話しして最終回とさせていただきます。
本誌創刊時の最大のテーマは、「世の中で“常識”といわれているものは、本当に“常識”なのだろうか」、あるいは「世の中で“非常識”といわれているものは、本当に“非常識”なのだろうか」というものでした。53号を発行していく間、「自然」や「安全・安心」、「管理」などさまざまなキーワードで各界気鋭の論客にご寄稿いただきましたが、ほぼすべてのエッセイをこの「常識を疑う」という切り口で書いていただき、我々編集部員も毎回新たな気付きを与えていただきました。
創刊時にこのようなことを考えたのも、我々は毎日を円滑に過ごすために様々な“常識”に基づいて自分の行動を決定していますが、この“常識”を身に着けた経緯を考えてみると、はなはだ心もとないことに気付いたからです。わが身を省みても、仕事で扱っている塩のことであれば、“常識”として定着させる前に、論理的にきちんと考えて判断することができる(と思っている)のですが、専門外のことになりますとあまり深く考えもせず(特にそれが権威ある人やメディアから発せられたものであればますます)「そんなものかな」ととりあえず“常識”としてとりこんでしまうことがとても多いような気がします。
もちろん思考力と時間には限りがありますから、徹底的に突き詰めて考えた上で“常識”としてとりこむ、という作業を全ての事象について行うことは現実的に難しいわけですが、特にインターネットが普及して以降、有用な情報が飛躍的に増えたのと同時に、質の悪い情報も同じように増え、情報の吟味を十分に行うことの重要性がますます高まっているといえるでしょう。
さらに、よく吟味した上でとりいれた“常識”も安心はできません。様々な研究が進むことによって、これまでの“常識”が覆されることがよくあるからです。例えば昨年話題となった冥王星の件。「惑星」の定義の見直しに伴い太陽系の惑星から除外されることとなりました。筆者(30代後半)の子供時代には、太陽系の惑星を「水金地火木土天海冥(ただし今は一時的に水金地火木土天冥海)」と覚えなさい、と習いましたが、今年からは水金地火木土天海とちょっと語呂が悪くなったフレーズで習うことになるのでしょう。
この例では惑星の定義が変わっただけで、冥王星自体がなくなったわけではないので、それまでの“常識”が本質的な誤りとなってしまったわけではありません。しかし、「太陽系の惑星は9個」という言い方をすれば、やはりこの“常識”は誤りといわざるを得ません。
本誌では、塩や食だけに限らずさまざまな事象をとりあげてきましたが、(特に専門知識を持たない)一読者として読んでみると、毎回のように「なるほど、なんとなくわかっていると思っていたけれど、どうもそんな単純なものではないらしい」と思わされました。これは正に情報を吟味せずに受け入れてしまっていたこと、そして“常識”の見直しを怠っていたことの証左といえるでしょう。
そういうわけで、筆者は本誌の編集を通じて、それまで全く知らなかった、そして本誌に携わらなければ今後もずっと知らないままとなったであろう知識・情報をたくさん得られたわけですが、それ以上に、少なくとも健全な批判的精神を持ち、外部から取り込む情報や既に持っている知識を常に吟味することを心がけている限り、誤った“常識”にとらわれ続ける危険性は確実に少なくなる、ということを学んだことが、実は最大の収穫だったのではないかと思っています。もし読者の中にも本誌をお読みになって、同じ様なことにお気づきになられた方がいらっしゃったとすれば、編集者としてこれ以上嬉しいことはありません。
とりとめもなく書いてまいりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。またべつのかたちで皆様との接点ができればと願っています。永きにわたるご愛読に心より感謝申し上げます。
Webマガジンen編集部 |