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Director's Notes

塩の可採年数

2007年1月号 No.51

   原油価格が高騰している。昨年秋以降は少し値を戻しているが、それでもガソリンにしても灯油にしても3、4年前と比べてずいぶん上がったなあ、という印象をお持ちの方も多いだろう(2006年末時点では、2002年前半と比べおよそ3倍の1バレル60ドル程度)。

   ところで原油価格が上がると、石油の可採年数も増えるということを御存知だろうか。Wikipediaによると、可採年数とは確認埋蔵量を世界の年間消費量で割った値だが、確認埋蔵量というのは“現在の技術で経済的に採取できる埋蔵量”であるため、新たな油田が発見されたり、技術の向上により新たに採れるようになる原油がなくても、原油価格が上がればそれだけ採掘にコストをかけても採算に合う原油が出てくるため、確認埋蔵量も増えることになるのだそうだ。

   筆者が子供のころは脅かすように「石油はあと30年で無くなる!」などと聞かされて育ったものだ。その後一向に枯渇する様子が無いのは新たな原油が見つかっているからだとばかり思っていたが、こうした理由もあったわけだ。

   さて、前置きが長くなってしまったが、こんなことを調べてみたのも先日ある一般の方から「塩はあと何年採れるのか。ちょっと計算してみたのだが、意外と短いように思う。そちらで把握していないだろうか」とご質問をいただいたためだ。概算であれば簡単に計算できるので皆さんもやってみていただきたい。

   ここでは単純化のためにとりあえず海水中に含まれる塩分のみで考えてみよう(実際にはこれ以外に岩塩[地中に閉じ込められた海水の水分が抜けて塩になったもの]、塩湖[イスラエルの死海のように、海水が内陸に閉じ込められて湖になったところ]等が全世界に散らばっている。これらの量も膨大で、例えばドイツだけで200兆トンとする文献もあるそうだが、地球の合計埋蔵量となると推計も難しいため、ここでは無視する)。

地球全体の海水の量は、約14億キロ立法メートルとされている。
1,400,000,000Km3
(14億キロ立法メートル)
(A)
これを立法メートルに換算するため、(A)を10億倍(10の9乗)すると... 〔(A)×109
1,400,000,000,000,000,000m3
(140*1016立法メートル)
(B)

海水1立法メートルはほぼ1トンなので、海水の重さは...

1,400,000,000,000,000,000t
(140*1016トン)
(C)

海水中の塩分の割合を3%とすると、全世界の海水中の塩分量は... 〔(C)×3%〕

42,000,000,000,000,000t
(4.2*1016トン)
(D)

   非常に大雑把な計算だが、海水中に含まれる塩の量はだいたい4.2×10の16乗トンである。これは1兆トンの4万倍以上の量であり、海水中だけでもいかに多くの塩があるかお分かりいただけるだろう。そして現在の世界の年間塩生産量は約2億トンであり、うち1/3程度が海水を原料とするものなので、1年間に海水から取り出される塩の量を7,000万トンと仮定すると、塩の可採年数は以下のようになる。

海水中の塩分量(D)を、年間生産量で割ると... 〔(D)÷7,000万トン〕
600,000,000年
(6億年)
(E)

   というわけで、海水から採れる塩だけでもほぼ無限と言っていいだろう。計算自体はごく簡単なものだが、桁数が非常に多いため、間違いやすい。ご質問された方もちょっとした勘違いがあったらしく、海からだけでも6億年とご説明するとホッとされていた様子だった。

   ただしこの話にはオチがあって、塩の用途を食べることに限れば本当に無限といってよい。というのも石油は、採掘する→燃やす→二酸化炭素と水に分解される、という一方通行なので、燃やしてしまえばおしまいだが、塩(つまりナトリウムと塩素)は食べても消費されるわけではなく、同量が体外に排泄されていく。このためそれらがまた海に流れ込み、海から塩を取り出し、それを食べる、というサイクルはずっと続けられるのである。

   そういうわけで、塩の場合は枯渇の心配はほとんどない。むしろ水と同様、しっかりした品質のものが、必要なときに、必要な場所で、必要な量だけ、リーズナブルな値段で買える、という環境づくりが大切であり、当財団の使命もまさにそこにある。


Webマガジンen編集部



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