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夏の終わりに休みを取って八丈島へ行ってきた。真っ赤なハイビスカスが咲き乱れていて、南国だなぁとバカンス気分が盛り上がった。
八丈島といえば、明日葉や黄八丈が有名であるが、これと並んで「くさや」も有名である。「くさや」とは、魚を保存するため塩水に漬けて天日で干した干物の一種で、江戸時代に貴重な塩を節約するために同じ塩水を繰り返し漬け液として使用したことに発する伊豆諸島の珍味である。同じ塩水に繰り返し魚を漬けることにより、塩水に魚の成分がしみ出して液が発酵し、それに魚を漬けると独特のにおいと旨みが生まれる。
宿泊先で、明日はどこへ行こうかとガイドブックを眺めていたら「くさや工場見学」の文字があった。名物に触れる良い機会なので一般見学をさせてもらう事にした。残念ながら、仕込みの時ではなかったため、液につかっている魚を見ることは出来なかったが、作業工程等のお話を聞くことができて興味深かった。
「工場見学」と記載されていたので、近代的な工場で、ベルトコンベアの上にくさやが乗っている状況を想像していたが、行ってみると学校の体育館よりも小さいくらいのこじんまりとした工場で、工程のほとんどは手作業で行なわれているようだった。
工場には、漬け液を貯めてある槽が複数あり、魚を並べて干すための高さ2m程の台に網が水平に10枚ほど等間隔で並べてあった。この日は、女性社員2名がアジのくさやを一つ一つ丁寧に、慣れた手つきで袋詰めしていた。私たちが行くと一人が手を止めて、くさや作りの工程を説明してくれた。
くさやは、昔、塩が貴重だったころに塩分のリサイクルを考えて発展したもので、以前は各家庭で漬けられていた。漬け液は、代々引き継がれ、お嫁に行くときは実家の漬け液を持って行ったという。ぬか漬けのような感じだ。訪れた工場の漬け液は、100年近く引き継がれているものであるとのお話だった。
作り方は、ムロアジの内臓を取って開き、漬け液に数日漬けて発酵させ、網の上に並べて干す。魚を漬けている数日間は、適宜漬け液をかき回して発酵を促進させなくてはならない。そのため、その間は寝るのもままならないという。最終的な浸かり具合を判断するのは社長さんだそうで、かなりのベテランでないとこの判断が難しい。
通常、漬け液の濃度は10%程度だが、季節によって漬け時間や塩分濃度を変えるという。
くさやの発祥地は、新島だといわれている。そのためか、八丈島のくさやは、新島や大島に比べてにおいがソフトだという。また、最近ではくさやをもっと多くの人に食べてもらおうと、漬け時間を短くする等においをソフトにする工夫をしているそうだ。
そのせいだろうか。くさやは保存食というイメージがあったが、冷蔵庫で3,4日、冷凍庫で2ヶ月持つと言われ、意外と短い賞味期限に驚いた。以前に述べた梅干同様、日本から伝統の保存食というのは消えつつあるのかもしれない。
「本来の味を残したいが、買って食べてもらえないことには商売にならない」とポツリと言った彼女の言葉が耳に残った。
Webマガジンen編集部 |