たばこと塩の博物館では、今年も7月21日から8月31日までの期間、「夏休み塩の学習室」を開催している。これは、毎年小学校4・5・6年生を主対象に、実験などを交えて、おもに「科学的」な側面から「塩」を紹介しようという企画で、今年で28回目であり、毎年、少しずつ異なるテーマを設定して、その年ごとの「テーマ展示」を企画している。「塩の学習室」の全体像は、第10回で紹介したものと重複するので、今回の稿では「テーマ展示」の部分以外は省略する。
この連載の第16回で紹介したように、昨年の「テーマ展示」は、かなり実験的、冒険的なものであったが、今年は、その点では、穏当な企画である。また、第10回、第16回で書いたように、テーマ展示が「私がその時点で関心を持っていたこと」に偏る傾向があったので、今回はオーソドックスな内容で、子どもの立場の方を優先して、「楽しんでもらえる」企画にしようと努めた部分も大きい。
今年のテーマ展示は、企画全体のタイトルともなっていて、『スーパーマーケットでさがせ!塩のひみつ』というものである。スーパーマーケットの商品を通して「知らないうちに様々な用途に使われ、身の回りで活躍している塩」に気付いてほしいという企画であり、一言で短く表現するなら「塩の使いみち」がテーマである。このように、一言で説明できる点も昨年のテーマ展示とは大きな違いである。
「塩の使いみち」についてのオーソドックスな内容のテーマ展示といっても、それは、関係者にとってオーソドックスなだけで、一般の方にとってはオーソドックスな話ではないだろうと思う。というのは、紹介する「塩の使いみち」のほとんどが食品以外の分野の話だからである。現在の日本では食用に使う塩の量は年間使用量の15%に満たない。残り85%の塩は、工業用など食用以外に使われている。それが、現在の日本の「塩利用の文化」なのである。これまでの連載で触れてきたような文化とはニュアンスが異なって感じられるかも知れないが、これも「塩利用の文化」であることは間違いない。
塩の年間使用量の85%が食用以外に使われるという事実は、塩の関係者には常識だが、ふつうは知られていない話である。それゆえ、「塩の使いみち」というテーマは、取り扱う内容そのものが「へえー、そうなのか!知らなかった」と言いたくなるものを含んでいるため、テーマとして成立しやすい。「塩の使いみち」をテーマにしたことは過去にも何回かあったが、これまでの経験では、塩に関わる品物を1つずつ「展示」して、どのように塩が関わっているかを「解説」する展示方法では、なかなか解説を読んでもらえないという難点があった。また、話題が塩だけでなく、ソーダ工業の原料として、例えば苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などに姿を変えて使われる用途にもおよび、むしろ、ソーダ工業経由での用途の方が主役となるため、小学生には親しみにくいという難点もあった。
そこで、すでに企画のタイトルでも紹介したように、今年の展示会場には、『神南ストア』という架空のスーパーマーケットを作ってしまった。並べられた品物を子どもたちが手にとってカゴに入れ、レジに運んでバーコードを読ませると、レジの機械には、値段ではなく、塩との関わりかたが表示されるという趣向である。最後は「解説を読む」ことになるのは同じだが、自分で品物を手にとってレジの機械で「塩の使いみち」を探し出すという点では、単に品物が「展示」してあるのとは異なり、体験型で、能動的に調べる形になっている。展示が始まって10日間のようすでは、このしかけを楽しんでもらえているようである。
では、順番にそって内容を紹介したい。 |