しかし、このような一見すると自明にみえる推測は、少なくとも統計的には支持されません。官庁が公表している雇用者一人当たりの労働時間はむしろ減少しているからです(図2)。図2によれば、90年代以降、総実労働時間数は減少しています。しかし、すでに確認したように、日本社会では90年代半ば以降、非正規雇用が全体に占める割合が一貫して上昇していました。もちろん、総実労働時間数が90年代になって減少した背景には、法改正であるとか、経済状況であるとか、考慮にいれなければいけない要因がいくつか存在します。しかし、仮にそうした要因を考慮にいれたとしても、この現象はやや意外という感じがします。

また同様のことは、社会調査データによる個票分析においても観察できます。私もメンバーとして関わった2003年pre-SSM調査では、回答者に労働時間を尋ねています。その結果によると、立場が弱いはずの(派遣社員・契約社員・嘱託という身分で勤務している)雇用者よりも、立場が強いはずの常時雇用されている一般従業者の労働時間の方が長くなっているからです。どうやら、安定した身分を得ている正規雇用者の方がたくさん働いているようです。いわば、正規雇用者は、安定した身分に甘んじることなく、自ら積極的に企業のために働いているようです。
でも、なぜでしょう。正規雇用されている人間は、所属集団(企業、職場)への帰属意識が強く、その分、仕事に対して高いコミットメント(関与)をもつからだ、というのは一つの可能な説明です。でも、本当でしょうか。 |