塩の味力

新潟(村上)・塩引鮭

新潟(村上)・塩引鮭

“いよぼや”。新潟県北部に位置する村上では、鮭のことをこう呼んでいます。“いよ”も魚、“ぼや”も魚を意味し、「魚の中の魚」と呼んで大切にしているのです。

江戸時代、村上藩の下級武士・青砥武平治(あおとぶへいじ)は世界ではじめて鮭の回帰性に注目し、三面(みおもて)川に産卵場所を整えるなどして遡上 (そじょう)する鮭の産卵・孵化を助ける方策を実施しました。それにより漁獲高も増え、藩に入る運上金が一千両以上にもなったと言われています。

村上の鮭料理は数多く、骨や内臓までも調理して食べられていますが、中でも“塩引鮭”はその横綱と言えるでしょう。

生鮭のえらと内臓を取り除き、血合いなど水洗いして取り除いてから、手作業でていねいに塩をすり込みます。塩漬け期間は3~4kgの鮭で3~4日。その後、ひと晩かけて流水などで塩を抜き、体表のぬめりや残った血合いなどを洗い落としてから約1~2週間、村上特有の寒風にさらして熟成させます。

市場でよく目にする新巻鮭と大きく違うのがこの製法です。また、内臓を取り除く際に腹をすべて切り離さず、胸びれの一部をつなげておく点や、寒風にさらす際も、頭を下に吊られるなど、切腹や首つりを嫌った城下町文化ならではの名残とも言われています。

伝統に支えられたこうした製法が、今後も大切に受け継がれていってほしいものです。

塩引鮭はもっぱら焼いて食べられます。見た目は塩鮭と変わらないのですが、血合い、ぬめりなどていねいに取り除いて熟成させてあるため、魚臭さが薄く、鮭の奥深い味わいが口の中に広がります。皮もカリカリと香ばしく、骨以外はすべておいしくいただけます。
寒風にさらして熟成させた独特のうまみが、ほかの鮭にはない塩引鮭の特徴です。

今回取材にご協力いただいた悠流里は製造元直営の和食処。
塩引鮭(600円)のほか、酒びたし(650円)、焼漬(550円)、味噌漬(600円)、はらこ醤油漬(700円)はらす焼(700円)、珍味三種(氷頭なます、麹漬、めふん盛り込み600円)などのほか新潟の地酒やそばなど村上の味がいただける。
悠流里(ゆるり)
新潟県村上市塩町4-5
TEL:0254-53-6288

永田政義さん 本社に隣接する直売店・鮭乃蔵で代表取締役社長の永田政義氏からお話をうかがう。主力商品の塩引鮭のほか、約半年間乾燥、熟成をさせた鮭を薄切りにして清 酒をかけて、ひたしていただく酒びたしも人気。塩引鮭が村上の鮭文化の東の横綱なら、うまみが凝縮し燻製にしたような香りを持つ酒びたしは西の横綱。塩引 鮭は製品に加工後、冷凍保存されているため通年入手可能。切り身で400円(1切)程度、半身で3,600円程度。
株式会社永徳・鮭乃蔵
新潟県村上市塩町4-5
TEL:0120-157109
http://www.nagatoku.jp/

NHKきょうの料理テキスト 2007年1月号PRページより