研究報告

平成21年度研究報告

海水総合研究所 研究報告 第11号

題目 研究者 掲載頁
1 微結晶の付着現象による結晶成長速度向上の検討(第2報) 正岡 功士、
長谷川 正巳、
尾上 薫*
*千葉工業大学
P1
2 市販食用塩中の苦汁成分による味噌の品質への影響 中山 由佳、
眞壁 優美、
谷井 潤郎
P8
3 うどんの性状に及ぼす塩類の影響 眞壁 優美、
中山 由佳、
谷井 潤郎
P14
4 塩試料における一般生菌および大腸菌群検査方法の検討 中山 由佳、
野田 寧
P21
5 塩試料中の海洋性細菌および高度好塩菌検査方法の検討 中山 由佳、
野田 寧
P22
6 食用塩の安全性への取り組み 野田 寧 P23
7 海水資源に関する研究の歩み
-日本専売公社1971年報告書の概要-
長谷川 正巳 P27
8 イオン交換膜報製塩工場における電気透析装置の解体洗浄間隔の延長に向けた海水ろ過工程の課題 渕脇 哲司 P32
9 塩製造技術高度化研究開発事業2008年度報告 吉川 直人 P36
10 ヨーロッパ製塩工場調査報告
-Akzo Nobel Salt BV 社 Hengelo工場(オランダ)-
正岡 功士 P43
11 中国における塩事情調査 眞壁 優美、
古賀 明洋、
菊池 朱(研究調査部)、
党 弘之(研究調査部)
P48
12 資源の宝庫 ~海水~ 長谷川 正巳 P55
13 ミネラルとしての「食塩」の話 谷井 潤郎 P59
14 塩とうどんの作りやすさ、おいしさ 眞壁 優美 P64

研究報告要旨

No.1
題目 微結晶の付着現象による結晶成長速度向上の検討(第2報)
筆者 正岡 功士、長谷川 正巳、尾上 薫*   *千葉工業大学
掲載頁 P1
投稿先 日本海水学会誌 63(3)、p343(2009)
要旨
結晶表面に母液中の懸濁微結晶が付着する現象を利用して見かけの結晶成長速度を向上させる技術の実用化に向けて、微結晶の発生由来や付着される成長結晶の表面粗さが見かけの結晶成長速度に与える影響を検討した。温度過飽和度1~30[K]、母液中の微結晶数2×104~7×105[kg-solution-1]の条件において、流動層型晶析装置内に塩化ナトリウム結晶1個を滞留させる回分晶析実験を実施した。結晶成長速度(dl/dt )AV[m/h]は種晶の表面粗さや微結晶の発生由来によらず、過飽和度ΔC [mol/kg-H2O]および微結晶数Nfine[kg-solution-1]を用いた式(dl/dt )AV=(1.047×10-2+2.90×10-8NfineC で表すことができた。
高結晶成長速度4,780[μm/h]の条件で成長した結晶の割断面の観察から、成長結晶の品質は一般的な塩化ナトリウム工業結晶と同程度であると考えられた。
これらの結果から、高過飽和度のもとで、微結晶数を増加させることにより見かけの結晶成長速度を向上させることができると結論づけた。
No.2
題目 市販食用塩中の苦汁成分による味噌の品質への影響
筆者 中山 由佳、、眞壁 優美、谷井 潤郎
掲載頁 P8
投稿先 日本海水学会誌 62(6)、p286(2008)
要旨
苦汁成分が異なる塩で味噌を製造し、味噌の成分、微生物測定を行い、さらに味の違いについて官能評価を行った。その結果、塩の種類により、味噌のpH、色、アミノ酸およびグルコース量が異なったが、微生物挙動に差は見られなかった。官能評価は、味噌汁の塩味、香り、美味しさの強さは、苦汁成分の多い塩で評価が低かったが、味噌汁の香り、色、味の好みは、いずれも差は見られなかった。よって、塩の種類により幾つかの成分量が異なるが、味噌汁の好みにおよぼす影響は僅かであることが示唆された。
No.3
題目 うどんの性状に及ぼす塩類の影響
筆者 眞壁 優美、中山 由佳、谷井 潤郎
掲載頁 P14
投稿先 日本調理科学会誌 42(2)、p110(2009)
要旨
うどんの物性に及ぼす塩類の影響について検討するため、種々の塩類と市販塩を用いて調製したうどんの物性評価を行った。また、市販塩については、官能評価を行い、うどんの食感に及ぼす影響について検討した。
生うどんの物性については、各塩類の影響が見られ、生うどんの生地における伸びやすさについては、塩化カリウムを用いた生地が最も伸びやすく、硫酸カルシウムを用いた生地が最も伸びにくく硬いことが分かった。市販塩を用いた場合、塩種による差が見られたが、その差は小さかった。
ゆでうどんについては、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを用いたうどんについては軟らかい傾向が見られたが、生うどんの場合と比較し、各塩類の影響は小さくなることが分かった。市販塩を用いた場合、物性評価、官能評価の結果に差はなく、いずれの塩を使っても食べたときの食味には大きな違いはないことが分かった。
No.4
題目 塩試料における一般生菌および大腸菌群検査方法の検討
筆者 中山 由佳、野田 寧
掲載頁 P21
投稿先 防菌防黴 36(12)、p815(2008)
要旨
塩試料における一般生菌および大腸菌群の検査方法について検討した。その結果、最適な検査方法の検討においては、一般生菌では混釈法を用いても培地のNaCl混入による影響はほとんどないと思われる。しかし、塩試料は菌数が少ないため、正確な菌数測定のためには試料溶液の接種量を増加させることのできるMF法が適していると考えられた。大腸菌群については、直接法では培地のNaCl濃度が増加するため大腸菌群が検出されないことが示唆され、NaClを培地に混入させないMF法が適切と考えられた。
また、試料調製時におけるNaCl濃度変化に伴う浸透圧の影響については認められなかった。希釈水への添加剤については、緩衝剤は有効ではないが、ペプトンは損傷菌に対して有効なことが示唆され、塩試料においては、0.1%ペプトン加生理食塩水を希釈水として用いることが適していると考えられた。
No.5
題目 塩試料中の海洋性細菌および高度好塩菌検査方法の検討
筆者 中山 由佳、野田 寧
掲載頁 P22
投稿先 防菌防黴 37(5)、p323(2009)
要旨
塩試料中の海洋性細菌および高度好塩菌検査方法について検討した。その結果、試料希釈時の塩化ナトリウム濃度の影響は、いずれの微生物も希釈後の試料溶液の塩化ナトリウム濃度が低いと微生物数は少なくなることが確認された。希釈水へのペプトン添加の効果については、高度好塩菌では、ペプトンを添加した希釈水の方が有意に菌数は多くなり、ペプトンを添加することにより損傷菌の死滅を抑制することが示唆された。また、海洋性細菌については、ペプトンよりも滅菌海水の方が死滅抑制効果のあることが示唆された。接種方法については、いずれの微生物においても液体培地と比較して固体培地の方が微生物数は多くなり、固体培地による有機物などの影響はないことが示唆された。培養温度については、海洋性細菌は、20~40℃の範囲では、20~25℃が最も菌数が多く、20~25℃の温度範囲では、培養温度が高いほど培養時間を短縮できることが示された。高度好塩菌については、35℃付近が最も菌数が多く測定できることが示された。
No.6
題目 食用塩の安全性への取り組み
筆者 野田 寧
掲載頁 P23
投稿先 日本海水学会誌 62(3)、p148(2008)
要旨
食用塩の安全性を確保するために、これまで塩事業センターでは食品の安全性に関する法的規制に適用することを基本に検討を行ってきた。現在、当センターの安全性に関する自主基準の一つとしては、製造基準があり、製品だけでなく、原料から製造工程に至るプロセスが安全であることを検証している。その他、国際規格であるCODEX基準を品質規格に適用することや食品中の残留農薬に係るポジティブリスト制度にも適切に対応している。
No.7
題目 海水資源に関する研究の歩み
-日本専売公社1971年報告書の概要-
筆者 長谷川 正巳
掲載頁 P27
投稿先 日本海水学会誌 63(4)、p209(2009)
要旨
1971年に当時の日本専売公社から(旧大蔵省専売局)は「海水資源に関する研究の歩み」と題した報告書が発刊された。
本報告では、現在の海水総合利用技術開発にも活用可能な研究成果が提案されており、同技術に携わる研究者への周知を目的に、その概要を取り纏めた。
No.8
題目 イオン交換膜法製塩工場における電気透析装置の解体洗浄間隔の延長に向けた海水ろ過工程の課題
筆者 渕脇 哲司
掲載頁 P32
投稿先 日本海水学会誌 62(5)、p238(2008)
要旨
電槽の解体洗浄間隔の延長にむけた課題は、濁質を効率的に除去可能な海水ろ過方法の確立、付着にかかわる濁質の挙動を把握するための水質評価方法の確立、電槽における濁質の付着機構の明確化などである。それらのうち、濁質を効率的に除去可能な海水ろ過方法の確立について検討を進め、現行の砂ろ過装置と比較してろ過速度が速く、より清澄な海水を得ることが可能な高速ろ過装置を開発した。現在は、この装置の効果を実工程において検証し、管理指標を明らかにすることについて検討を進めている。
No.9
題目 塩製造技術高度化研究開発事業2008年度報告
筆者 吉川 直人
掲載頁 P36
要旨
次世代イオン交換膜の開発については、膜合成法の最適化、膜の選択処理法について検討した。また、膜合成のスケールアップの検討を実施し、パイロットスケール膜合成装置を構築した。
一方、合理的・効率的な採かん工程の構築に向け、高速ろ過装置の実用化検討を継続するとともに、電槽構造の最適化検討、ろ過海水の水質管理に関する検討を実施した。
No.10
題目 ヨーロッパ製塩工場調査報告
-Akzo Nobel Salt BV 社 Hengelo工場(オランダ)-
筆者 正岡 功士
掲載頁 P43
要旨
2008年9月18日にオランダのAkzo Nobel Salt BV社(以降、Akzo Salt社)Hengelo工場を視察し、併せてオランダの製塩事情調査を行った。この結果をAkzo Salt社の概要とともに報告した。
No.11
題目 中国における塩事情調査
筆者 眞壁 優美、古賀 明洋、菊池 朱(研究調査部)、党 弘之(研究調査部)
掲載頁 P48
要旨
中国の塩に関する情報収集を目的に、2008年11月4日から14日にかけて行った中国塩業総公司(北京)、製塩企業2社(天津長芦漢沽塩場有限責任公司(天津)、中塩金壇塩化有限責任公司(金壇))の訪問結果および市販塩の市場調査(北京、大連、金壇、上海)の結果を報告した。
No.12
題目 資源の宝庫 ~海水~
筆者 長谷川 正巳
掲載頁 P55
投稿先 原子力eye 54(11)、p29(2008)
要旨
日本における海水資源利用の現状と、淡水化、製塩を主体とした海水資源回収の可能性について述べた。
No.13
題目 ミネラルとしての「食塩」の話
筆者 谷井 潤郎
掲載頁 P59
投稿先 食品工業 52(5)、p71(2009)
要旨
食塩の摂取量の現状とその評価、食塩から塩化ナトリウム以外のミネラルが摂取できるかなど、ミネラルとしての食塩の情報を収集した結果を概説した。
No.14
題目 塩とうどんの作りやすさ、おいしさ
筆者 眞壁 優美
掲載頁 P64
要旨
生うどんについては各塩類の影響が見られ、伸びやすさについては、NaCl、KClを用いた生地が最も伸びやすく柔らかく、CaSO4を用いた生地が最も伸びにくく硬いことが分かった。生地中のグルテンの形成の程度が異なるためと推測された。ゆでうどんでは、生うどんの場合と比較し各塩類の影響は小さくなることが分かった。市販塩を用いた場合、生うどんは塩種による差が見られたが、その差は単成分の場合と比較して小さかった。また、特定のイオンだけではなく、種々のイオンの複合的な影響があると考えられる。ゆでうどんでは物性評価、官能評価の結果に差はなく、いずれの塩を使っても食べたときの食味には大きな違いはないことが分かった。