研究報告

平成17年度研究報告

海水総合研究所 研究報告 第7号(2005)

題目 研究者 掲載頁
1 製塩工程の自動化技術(第5報)
沈降式インライン粒径分布測定装置の開発
長谷川 正巳、
正岡 功士、
加留部 智彦
P1
2 市販にがりの品質調査 芳賀 麻衣子、
新野 靖、
西村 ひとみ、
関 洋子
P8
3 イオン交換膜の高性能化による製塩コスト低減効果に関するシミュレーション 吉川 直人 P13
4 各種製塩プロセスの製塩コスト比較に関するシミュレーション 吉川 直人、
奥山 邦人*
*:横浜国立大
P22
5 高速ろ過装置設計諸元の基礎的な検討 渕脇 哲司、
麻田 拓矢
P32
6 せんごう塩の流動性評価に関する検討
-流動性評価におけるモデルの適用-
鴨志田 智之、
篠原 富男
P37
7 塩の結晶形状変化 鍵和田 賢一 P41
8 ヨーロッパの製塩工場、製塩プラント調査 加留部 智彦、
長谷川 正巳
P44
9 オーストラリア塩田の概況 野田 寧 P51

研究報告要旨

No.1
題目 製塩工程の自動化技術(第5報)-沈降式インライン粒径分布測定装置の開発-
筆者 長谷川 正巳、正岡 功士、加留部 智彦
掲載頁 P1
要旨
晶析装置から採取した懸濁結晶を予め沈降脚に沈降させて分級し、結晶群が透過型吸光度計を通過したときの吸光度変化より、粒径分布を測定する方法を検討した。
所定の粒径範囲に分級した試料の出力の立ち上がり時間を、その粒径範囲内の最大粒子が吸光度計に到達する時間として、吸光度変化における経過時間を粒径に換算した。さらに、所定の粒径範囲における吸光度の積算値を重量で表し、粒径範囲ごとに検量線を作成した。この検量線を元に種々の粒径分布をもつ試料に適用して粒径分布を測定した結果、良好な測定値が得られた。
次に、製塩晶析装置で想定される種々の課題を検討し、上記結果と共に、工程に適用可能な装置構造を設計し、実際に適用して実用性を検証し、オンタイムに良好な精度で測定可能なことを明らかにした。
No.2
題目 市販にがりの品質調査
筆者 芳賀 麻衣子、新野 靖、西村 ひとみ、関 洋子
掲載頁 P8
要旨
市販されているにがりの品質を調査することを目的とし、収集したにがりについて、主成分、微量成分の分析を行った。にがりには、海水をそのまま濃縮した製塩にがりと海水をイオン交換膜で濃縮した製塩にがりがあるが、後者のにがりの方が高濃度でCaが含まれているといった特徴がみられた。各にがりの全塩分濃度には大きな差はないが、 Mg濃度は1.0~5.0%、NaCl濃度は2.4~21.9%と商品によって濃縮度がまちまちであり、同量使用した場合、調理品の仕上がりや味覚などへの影響が考えられた。
微量成分では、Zn、Cu、Ni、Fe、およびMnを多く含むにがりが見られた。これらは、海水からにがりへの濃縮を考慮した濃度よりも多く含まれている為、海水中に溶存している成分以外からの混入であると考えられた。その他、Moが海水の濃縮度に比例して含まれていること、また、海洋深層水利用商品の成分がその他の商品と差が見られないことなどの知見が得られた。
No.3
題目 イオン交換膜の高性能化による製塩コスト低減効果に関するシミュレーション
筆者 吉川 直人
掲載頁 P13
投稿先 日本海水学会誌 59(4)、p273(2005)
要旨
イオン交換膜製塩プロセスにおけるイオン交換膜の電気抵抗の低減による製塩コスト低減効果についてシミュレーションにより検討した。シミュレーションは電気透析槽と4重効用の蒸発缶による製塩プロセスを用い、エネルギーコスト、設備コストの和を製塩コストとして算出した。その結果、イオン交換膜の電気抵抗を50%低減することにより、エネルギーコストは2.5%、設備コストは5.6%、製塩コストは8.1%低減されることが分かった。製塩コストの低減効果は決して大きくはなかったが、膜の耐久性向上による設備コスト低減の可能性もあり、イオン交換膜の高性能化は製塩コストを低減していく上での一つの柱であると考える。
No.4
題目 各種製塩プロセスの製塩コスト比較に関するシミュレーション
筆者 吉川 直人、奥山 邦人 *   * :横浜国立大
掲載頁 P22
投稿先 日本海水学会誌 59(4)、p282(2005)
要旨
現状技術で実現可能な蒸発法(多重効用法、蒸気圧縮法およびこれらの組み合わせ)によるシミュレーションを実施し、イオン交換膜製塩法と比較することにより、製塩コスト低減の可能性について検討した。その結果、製塩コストはイオン交換膜製塩法と比較して多重効用法において1.63倍、蒸気圧縮法において2.62倍、多重効用法と蒸気圧縮法の組み合わせにおいて1.60倍となり、蒸発法だけを用いる製塩プロセスによるコスト低減は難しいことが確認された。このため、現状の製塩プロセスであるイオン交換膜製塩法を基本とした改善によりコスト低減を図ることが重要であると考える。
No.5
題目 高速ろ過装置設計諸元の基礎的な検討
筆者 渕脇 哲司、麻田 拓矢
掲載頁 P32
要旨
イオン交換膜製塩工場における海水前処理装置の高性能化を目的に、繊維状ろ材を用いるろ過装置開発の可能性を検討した。本研究では、圧密充填可能な不織布をろ材として採用し、ろ過性能に関わる要因を検討した。その結果、ろ過性能にはろ層の圧密度が関係し、圧密度が高くなるほどろ過海水の水質は向上し、清澄化時間も短縮できることが明らかとなった。しかし、圧密度が高くなるとろ過装置の圧力上昇が早く、逆洗周期が短くなることもわかった。そこで、円筒形のカラム下部にコーンを設置した構造を考案し、円筒部で濁質粒子の粗取りを行い、残った粒子をコーン部で効率的に捕捉することを検討した。この検討により、ろ過流速60m/hで、清澄化時間1h、清澄化時間以降のろ過海水のFI値を3.5以下、逆洗間隔を12時間以上とすることができ、実用化に関する設計諸元を得ることができた。
No.6
題目 せんごう塩の流動性評価に関する検討-流動性評価におけるモデルの適用-
筆者 鴨志田 智之、篠原 富男
掲載頁 P37
要旨
せんごう塩の流動性評価においてモデル化した粉体層強度の適用を検討し、有用性を明らかにした。また、粒子間力がせんごう塩の流動性において支配的因子であることをモデル化の過程で明らかにした。
No.7
題目 塩の結晶形状変化
筆者 鍵和田 賢一
掲載頁 P41
 
No.8
題目 ヨーロッパの製塩工場、製塩プラント調査
筆者 加留部 智彦、長谷川 正巳
掲載頁 P44
要旨
ヨーロッパの製塩工場における腐食の現状、防食対策、装置材料の使用状況および晶析技術について調査した。結果は以下の通りである。
(1)
MESSO社は天日塩、岩塩を原料とした製塩プラントを製作しており、晶析装置の型式は3種類で粒径により装置型式を選択する。FC型とOSLO型は吐出管が晶析装置中央部まで伸び、上向き噴流により良好な結晶流動状態が得られている。
(2)
SALINEN社の塩形状は14面体結晶であるため、生かん水、精製かん水および母液について重金属、リンを分析した結果、母液のみからリンが検出された。同社の晶析工程ではポリリン酸を添加していることから、媒晶作用により14面体結晶が生成したと推定した。
(3)
ヨーロッパでは一般に晶析装置材料の蒸発缶にモネルクラッド、加熱缶チューブにチタンまたはモネルを使用している。また、缶内母液のpHは我が国と大きく異なり、装置材料の腐食性の相違に影響していることが推測された。なお、AKZO社ではDO管理を行い、気密性の早期補修による防食対策を行っている。
No.9
題目 オーストラリア塩田の概況
筆者 野田 寧
掲載頁 P51
投稿先 ソーダと塩素 2005,11・12 Vol.56、p237
要旨
オーストラリア塩田の視察を行い、ポート・ヘッドランド塩田、オンスロー塩田およびシャークベイ塩田について、製塩に関する技術情報の収集と整理を行った。上記の3塩田について沿革、気象条件をはじめ、蒸発池、調節池、結晶池、洗浄プラントおよび貯塩・搬出における塩田、装置類の規模や塩、苦汁などの主成分、重金属濃度等について要約した。また、GPSによる水平位置の確認、データ通信などの革新的な採塩方法の進捗状況、塩田造成および拡張計画とその現状等について紹介した。
将来的に上記塩田の概要に変化は少ないと考えられるが、今後も情報更新やデータの充足が必要である。