研究報告

平成12年度研究報告

海水総合研究所 研究報告 第2号(2000)

題目 研究者 掲載頁
1 塩化ナトリウム過飽和溶液中の仮想核の成長速度への影響 長谷川 正巳、
豊倉 賢*
*:早稲田大学
P2
2 製塩工程の自動化技術(第3報)ニューラルネットワークによる粒径制御技術の検討 長谷川 正巳、
伊藤 浩士、
二宮 直義、
新藤 敏晴*、
石丸 直之*
*:日本たばこ産業
P7
3 製塩工程の自動化技術(第4報)ニューラルネットワークを用いた工業晶析装置における粒径制御 長谷川 正巳、
伊藤 浩士、
大久保 和也、
二宮 直義
P13
4 赤外全反射減衰法による製塩工程溶液硫酸イオン濃度の測定方法 吉川 直人、
佐藤 寿邦*、
大矢 晴彦*
*:横浜国立大学
P18
5 赤外全反射減衰法による高濃度塩類混合水溶液の組成測定方法 吉川 直人、
佐藤 寿邦*、
大矢 晴彦*
*:横浜国立大学
P22
6 市販塩の品質 新野 靖、
西村 ひとみ、
古賀 明洋、
篠原 富男、
伊藤 浩士
P27
7 せんごう塩の粒径、水分と粉粒体諸特性の検討 篠原 富男 P38
8 塩の分析における不確かさの推定 新野 靖 P46
9 逆浸透法による海水濃縮シミュレーション(第1報)一段逆浸透法による海水濃縮シミュレーション 吉川 直人 P55

研究報告要旨

No.1
題目 塩化ナトリウム過飽和溶液中の仮想核の成長速度への影響
筆者 長谷川 正巳、豊倉 賢*   *:早稲田大学理工学部
掲載頁 P2
投稿先 日本海水学会誌 50(2)、p131(1996)
要旨
塩化ナトリウム飽和溶液をいったん昇温することによって、その中に懸濁していると仮想された結晶核を溶解した後、それを過冷却して仮想核数を実測するとともに、表面の平滑な種晶を静置したセルに供給し、仮想核の結晶成長速度への影響を検討した。
種晶の平均成長速度は過飽和度が高いほど、懸濁仮想核数が多いほど増加した。そのときの種晶の成長過程を観察すると、表面に荒れを生じる過程と粒径の増加に伴って荒れが修復される過程の二つに分けられ、懸濁仮想核数が多いほど、成長過程に占める後者の割合が増加し、その結果、平均成長速度が増加したものと考えた。
No.2
題目 製塩工程の自動化技術(第3報)ニューラルネットワークによる粒径制御技術の検討
筆者 長谷川 正巳、伊藤 浩士、二宮 直義、新藤 敏晴*、石丸 直之*   *:日本たばこ産業(株)
掲載頁 P7(2000)
投稿先 日本海水学会誌 52(1)、p22(1998)
要旨
有効加熱面積3m2の小型晶析装置を用いて、所望粒径の製品結晶を生産するための操作条件を見い出す方法としてニューラルネットワークモデルを検討した。製品結晶粒径は蒸発速度、結晶懸濁密度、缶内液組成、種晶粒径および添加速度によって良好に相関され、任意に設定した操作条件で推定した製品結晶粒径と実測値は10μmの範囲内で一致した。
No.3
題目 製塩工程の自動化技術(第4報)ニューラルネットワークを用いた工業晶析装置における粒径制御
筆者 長谷川 正巳、伊藤 浩士、大久保 和也、二宮 直義
掲載頁 P13
投稿先 日本海水学会誌 52(1)、p28(1998)
要旨
400m2の有効加熱面積を有する工業晶析装置に、3つに説明変数;熱源蒸気流量、結晶懸濁密度および循環ポンプ回転周波数;から構成したニューラルネットワークモデルを適用し、製品結晶粒径のコントロール手法を検討した。Leave-one-out Cross Validation法におけるニューラルネットモデルの最適学習回数は50,000回で、製品結晶粒径の平均推定誤差は約30μmであった。この結果よりニューラルネットワークモデルは、実用上充分な精度を有しており、工業晶析において所望粒径の製品結晶を生産する操作条件の設計に有効であると考え、実用的なモデルの構築プロセスを提案した。
No.4
題目 赤外全反射減衰法による製塩工程溶液硫酸イオン濃度の測定方法
筆者 吉川 直人、佐藤 寿邦*、大矢 晴彦*   *:横浜国立大学
掲載頁 P18
投稿先 分析化学 47(9)、p571(1998)
要旨
日本の製塩方法の一つである溶解再生製塩法では、工程溶液中の不純物は硫酸イオンが主体であり、硫酸イオン濃度の管理が必要である。更に、製塩工程の自動化、省力化、最適化を図るためには、工程溶液の硫酸イオン濃度をインラインで迅速に測定することのできる測定法の開発が必要である。筆者らは硫酸イオンに特有のSO縮重伸縮振動に着目し、この新藤バンドを用いた硫酸イオン濃度の測定法について、赤外全反射減衰(ATR)法により測定濃度領域、吸光度に対する塩分濃度と試料温度の影響についての検討を行い、工程溶液の測定を行った。その結果、本法は塩化ナトリウム飽和溶液を検量線作成用の標準溶液として用いることにより、屈折率及び試料温度の影響をほとんど受けずに高精度な硫酸イオン濃度の測定が可能であることを示した。本法は工程溶液の簡易測定及びインライン測定に充分対応できると考えられる。
No.5
題目 赤外全反射減衰法による高濃度塩類混合水溶液の組成測定方法
筆者 吉川 直人、佐藤 寿邦*、大矢 晴彦*   *:横浜国立大学
掲載頁 P22
投稿先 ANALYTICAL SCIENCES 14、p803(1998)
要旨
製塩工場の晶析装置の缶内液は、NaCl、MgCl2、KCl、CaCl2からなる高濃度塩類混合溶液であり、これらの濃度を測定することは重要である。本測定法は、赤外全反射減衰法により測定した水の吸収波数に関係する6波数の吸光度変化を利用して缶内液の各成分濃度を測定する方法であり、実験に基づいた結果として、各成分濃度を正確に測定でき、他の成分より赤外スペクトル変化が大きい塩化マグネシウム濃度については、化学分析に近い精度で測定できることがわかった。
No.6
題目 市販塩の品質
筆者 新野 靖、西村 ひとみ、古賀 明洋、篠原 富男、伊藤 浩士
掲載頁 P27
投稿先 日本調理科学会誌 32(2)、p133(1999)
要旨
日本国内で市販されている家庭用調理用塩の品質を把握することを目的とし、国産塩と輸入食塩67点の主成分、微量成分及び物性値の調査を行い、以下の結果を得た。
(1)
国産の未乾燥塩は、海水を濃縮して製造した塩、天日塩を原料とした製品およびイオン交換膜製法塩を原料とした製品との間で、主成分、微量成分及び物性値にそれぞれの特徴が示された。
(2)
乾燥塩は、特徴としてpHが高く、難溶性の塩基性マグネシウム化合物が多く含まれている製品が見られた。
(3)
添加物塩は、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムが併用されている製品とグルタミン酸ナトリウムが添加されている製品が多かった。
(4)
輸入食塩の天日塩製品は、不溶解分が多く、鉄とアルミニウムが多く含まれていた。フランス製品からは有害元素であるヒ素、鉛、クロムが検出され、中国製品からはISO食用塩規格案の上限許容値を上回る銅が検出された。
本調査結果によって、市販塩の品質が明らかになり、消費者の商品選択に有効な資料となると考えるが、塩市場には今回調査対象とならなかった製品が数多くあるので、より多くの製品の品質を調査する必要がある。また、今回調査において有害元素が検出された製品もあったが、塩製品の安全性の観点から、近年注目されている有機系汚染物質や微生物の検査も必要となると考える。
No.7
題目 せんごう塩の粒径、水分と粉粒体諸特性の検討
筆者 篠原 富男
掲載頁 P38
要旨
せんごう塩の基礎的要素である粒径、比表面積、嵩密度等の1次物性及び粉体現象としての圧縮度、安息角等の3次物性について相互の関係を検討し、以下の結果を得た。
(1)
粉粒体物性は主に粒径と水分により整理でき、それらの関係式を作成した。
(2)
塩層の水分の存在状態が懸垂状態である残留平衡状態水分は粒径の増加に伴い減少するが、350μm以上ではほぼ一定となり、水分0.9~1.1%を示した。
(3)
粉粒体物性が変化する水分の領域は残留平衡状態水分とほぼ一致した。
No.8
題目 塩の分析における不確かさの推定
筆者 新野 靖
掲載頁 P46
要旨
当研究所は1999年3月にISO/IEC GUIDE25の認定を取得したが、取得するにあたり認定項目に対する不確かさの算出が必須となり、塩の分析における不確かさの算出を行った。その結果、Cl分析については、測容器具の公正および操作の熟練度が不確かさに大きく影響することが示された。重量分析である乾燥減量の測定については、天秤による重量測定の不確かさは極小であり、繰り返し測定時のσが不確かさとして適していることが示された。イオンクロマトグラフィーによるSO4分析とフレーム光度法によるK分析については、測定機器の出力値変動が不確かさの大部分を占めることが示された。
No.9
題目 逆浸透法による海水濃縮シミュレーション(第1報)一段逆浸透法による海水濃縮シミュレーション
筆者 吉川 直人
掲載頁 P55
要旨
一段逆浸透法による海水濃縮シミュレーションを行い、所要膜面積、所要エネルギーについて電気透析法と比較した。その結果、所要膜面積については逆浸透法のほうが電気透析法より小さく有利であった。一方、所要エネルギーについては電気透析法の方が逆浸透法と比較して有利であった。本シミュレーションは実際のプロセスとは異なる種々の問題点は残るが、膜の透過、分離性能から所要膜面積、所要エネルギーの定量的な把握を可能にした。